答えは、まだ
俺は地球を守る正義のヒーローを生業としているのだが、最近この星の住人が本当に守るに値するのかどうか疑念が生じている。俺が守るべき人々はその内側に、憎悪と蔑みを捨てきれず歪んだままでいる。俺が外敵を蹴散らしても、翌日にはもう彼らは争いの火種を撒いている。その中で正義を掲げて戦うことが今や重荷だ。
きっと誰もが「正義は勝つ」という物語を俺に重ねていた。そこにはいつも分かりやすい答えがあった。正義の敵がいつも悪とは限らないのは、彼らの方がよく知っているだろうに。
鏡の中に映る自分は、皆が憧れるという仰々しいコスチュームに身を包みんでいる。俺は結局、彼らが物語を信じたいが為に、分かりやすい答えを求めるが為に作り出された都合のよい虚像に過ぎず、本当の俺自身は、真の正義には程遠いところにいるのではないか。そんな考えが俺に取り憑くようになってしまった。
今日も、どうしたいのか答えが出ないまま地球にやってきた異星の怪人どもを見つけては片っ端から叩き潰す。答えを出せないもどかしさは、奴らの血が飛び散り肉を砕く手応えを感じた時、一瞬消え去った。奴らの肉片を踏みつけながら、俺は血で汚れた自分の掌を見る。べっとりと血をまとわせた掌はやけに熱く、その熱はじわりと心地よく身体に浸透する。いつかこの熱は暗い炎となって何もかも焼き尽くす──ふとそんな想像が頭をよぎり、俺は掌を握りしめてその熱を隠した。
9/17/2025, 9:31:56 AM