刹露「せつろ」𓊆仲良し💠🕯🌌𓊇

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🌸『答えは、まだ』—卒業式前日、教室にて

教室には、もう誰もいない。
黒板には「卒業おめでとう」の文字。
窓の外では、風に揺れる桜が、まるで何かを祝福しているようだった。

アカリは、最後の掃除を終えて、ひとり机に座っていた。
そこへ、ユウが静かに入ってくる。

「…アカリ。ちょっと、話してもいい?」

彼の声は、いつもより少しだけ低くて、真剣だった。

「明日、卒業式だね。みんなそれぞれの道に進んでいくけど…俺、どうしても今日、伝えたかったことがある。」

アカリは、彼の目を見つめる。
夕陽が差し込んで、彼の横顔を金色に染めていた。

「俺、君のことがずっと好きだった。
 進路も夢も、まだはっきりしてないけど——
 君の隣にいたいって気持ちだけは、ずっと変わらなかった。」

沈黙。
でもその沈黙は、ふたりの間に優しく流れていた。

アカリは、少しだけ目を伏せて、そして微笑んだ。

「…はい、私でよければ。」

その言葉は、まるで春の風のように柔らかくて、でも確かに心に届いた。

その瞬間——
教室のドアの向こうから、くすくすと笑い声が漏れる。

「きゃー!」「やっと言ったー!」「青春すぎる!」

ユウが振り返ると、ドアの隙間から同級生たちが顔を覗かせていた。
「うわ…見られてたのか…」

アカリは笑う。
「でも、ちょっと嬉しいかも。」

夕陽の中、ふたりの影が並ぶ。
「答えは、まだ」なんて言ってたけど——
今日、ここで出した答えは、きっと一生忘れない。

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🌸『答えは、まだ』—その後のふたり

卒業式の翌日から、ふたりのLINEは止まらなかった。
「おはよう」から「おやすみ」まで、何十回もやり取りを重ねて、
スタンプの使い方にも、ちょっとした癖にも、互いの温度が宿っていった。

春が過ぎ、夏が来て——
ユウは専門学校へ、アカリは地元の大学へ。
進路は違っても、週末には必ず会って、駅前のカフェで近況を語り合った。

ある日、ユウがぽつりと言った。

「アカリの親御さんに、ちゃんと挨拶したいんだ。」

アカリは驚いた顔をしたけれど、すぐに笑ってうなずいた。
「じゃあ、来週の土曜。お母さん、煮物得意だから覚悟してね。」

その日、ユウは緊張しながらもスーツを着て、手土産を抱えてアカリの家へ。
玄関で深く頭を下げて、「娘さんと、真剣にお付き合いしています」と告げた。
アカリの母は少し驚いた様子だったが、煮物をよそいながらこう言った。

「…あの子、あなたの話するとき、すごく嬉しそうなのよ。」

それから数年。
ふたりは互いの夢を支え合いながら、少しずつ未来を形にしていった。
ユウは映像制作の仕事に就き、アカリは保育士として働き始めた。

そして——桜がまた咲く季節。
ユウは、あの教室の跡地近くで、指輪を差し出した。

「“答えは、まだ”って言ってたけど——
 俺は、ずっと君と歩いていきたい。結婚しよう。」

アカリは涙を浮かべながら、笑った。

「…はい、私でよければ。」

結婚式の日。
教室の黒板に書かれていた「卒業おめでとう」は、今度はこう書き換えられていた。

「ご結婚おめでとう」

桜はまた、風に揺れていた。
まるで、ふたりの新しい旅立ちを祝福するように。

——“答えは、まだ”
でも、ふたりが選び続けた答えは、確かにここにあった。

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🌸『答えは、まだ』—そして、春の名前を持つ小さな命へ

結婚から一年後の春。
ふたりの新居には、桜の花びらが舞い込むような優しい空気が流れていた。
そしてその春、アカリは新しい命を授かった。

妊娠がわかった日の夜、ユウは何度も「ありがとう」と言って、アカリのお腹にそっと手を添えた。
「まだ小さいけど、もう君たちが僕の世界の中心だよ。」

季節は巡り、出産の日。
病室の窓から見える桜は、まるであの日の教室の風景を思い出させるようだった。

生まれてきたのは、女の子。
ふたりは迷わず、名前をこう決めた。

「春音(はるね)」
——春に生まれ、ふたりの心を繋いだ音を持つ子。

アカリは、赤ちゃんを抱きながら微笑んだ。
「“答えは、まだ”って言ってたけど…この子が、私たちの答えかもしれないね。」

ユウは涙ぐみながら、そっと春音の小さな手を握った。
「ようこそ、僕たちの物語へ。」

そしてその夜、ふたりは春音の寝顔を見ながら、あの教室で交わした言葉を思い出していた。
「…はい、私でよければ。」

その答えは、いまや三人の未来を照らす灯になっていた。



終わりです(*ˊᵕˋ*)
皆様今日はラブコメ系にさせてもらいました
どうでしょうか?
貴方は彼氏、彼女の事を幸せに出来てますか、?
っていう感じで締めさせて頂きます
それでは*˙︶˙*)ノ"おやすみないです

9/16/2025, 2:43:25 PM