『あなたがいたから』
人気のないカフェの、陽のあたる位置で珈琲を頂きながら新聞を読む。この一時が、私にとっての娯楽だ。
新聞にはでかでかと、英雄と書かれている。その隣には私の夫の写真が一枚。二年ほど前に、遺影にしてくれと言われた写真が使われている。それを見て、もう夫は帰ってこないんだと思い知らされた。知っていたはずなのに、分かっていたはずなのに。頭のどこかで、嘘だと何度もそれを否定していた。
唯一の娯楽の時が、まるで地獄にでも変わったようで。いつの間にか珈琲は冷えていて、陽も落ちていて、闇が街を包み込む一歩手前だった。
「お葬式明日やるからね」
義母のそんな言葉も、傷ついた心に重くのしかかる。初めて行くお葬式が夫のだなんて。
神様は、なんて残酷なことをするんだろうか。
6/20/2024, 1:11:55 PM