敵国との戦争で、我が軍の敗北は決定的だった。
他の家臣たちは、逃げ出すか敵の軍門に降ってしまった。
豪奢な玉座の間に残るのは、国王たる私と近衛兵長だけだ。
「もう敗北は確定だ。お前まで死に急ぐことはないだろう。今ならまだ間に合うぞ」
私は半ば投げ遣りに言う。
しかし、彼は静かに剣を構えたまま、この場から離れようとはしない。
「私にとって、誇りなき生は、緩やかな死と同義です」
いつも寡黙な彼の言葉が、私の胸を打つ。
「お前に説教されるとは。だが、それもそうだな」
私は玉座から立ち上がると、剣の塚に手を掛ける。
「ならば、最期まで誇れる生を共に生きようではないか」
「御意」
やがて、扉が開かれ、敵兵たちが雪崩れ込んでくる。
最期まで抗おう。誇れる生を、彼と共に。
8/16/2023, 11:56:32 AM