秘密の場所にも白いものは降り積もっているのかな。
空から落ちてくる大粒の雪を眺めて、自分だけしか知らない場所を脳裏に浮かばせている。
秘密の場所――それは、人それぞれに思い浮かんだかすかな記憶。
誰も使わない歩道橋の下。
がらんと人気のない音のする校門前。
昭和の地主が死んで土地だけ残った畑。
森。林。神社。
大きな石に奉る注連縄。
この中にはね、神様が宿っているんだ。という。
その理論からすれば、きっと空にだって神様は居るはず。この雪を降らせたものは、きっといる。自然と落ちてきた……わけではない。
明日から春の陽気が来る。
だから、この雪は名残り雪となるだろう。
日が変わる夜になれば止み、朝方には降り積もった白いものは儚く解けていくのだ。
3/9/2025, 8:46:38 AM