絆
「君はこれから、どうするの?」
君が突然として問いかけてきた。
それを、俺がパスタを巻いたフォークを
口に入れようとした直後に言うもんだから、
思わず俺は動きをとめて黙ってじっと見つめ返した。
パラパラと、巻いたパスタが解けて落ちていく。
それから黙ったっきり、君は何も言わない。
「これからどうするって、なにを?」
真意を飲み込めず、俺は問い返した。
真っ青を通り越した、今にも死にそうな色のない顔。
うつむいて、少し震えている。
食事には手を付けていない。
「まぁ、どうするもなにも、」
床に目をやる。正しくは床に横たわった、
「埋めに行くしかないんじゃないか。死んじゃってるし。」
死体は血を流すのもやめただそこにいる。
珍しくそっちから電話をかけてきたと思ったら、
君があんまり悲痛な声でたどたどしく助けを求めるものだから。
「埋めるって、どこに・・・」
「山とか?運びやすいように小分けにしたほうがいいかな。」
聞いてくるから返したら、君はまた黙り込んでしまった。
その間にパスタを齧っておこう。
電話越しに怒号が飛んでくるから、
君が危ないと思って急いできてみたんだけど。
着いたらあまりにも静かで、
少し覚悟して扉を空けたから肩透かしを食らった。
「それにしても、ちゃんとやり返せたんだね。よかったよ。」
そう続けた俺を見るように、ようやく君が少し顔を上げた。
依然として顔色は悪いし震えているけど、少しは前進したろう。
「全部終わるまで一緒にいようか。それくらいはさせて。」
「知ってたのに、何にもできなかったからさ。」
「これで縁切りにしてもいいから、君のためにならせてよ。」
二言三言、君に向けて言い放った。
「どうして・・・」
「?」
「どうして、そこまで、してくれるの。」
震えたまま、また君が問いかけてくる。
理由なんていくつもある、けど一番は一つ。
「君が俺の親友だから。」
歪んだ絆。狂った友情。
世間から、君から見たらそうだろう。
でも俺にとっては、何よりも正当な理由だった。
たまたま隣の席で、
たまたま二人とも食事好きで、
たまたま仲良くなっただけの俺達。
その偶然を逃すわけにはいかなかった。
運命なんかじゃないから、一度無くしたら帰ってこない。
なんでもないようにパスタを食べすすめ始めた俺を、君が見ている。
俺達には死体を片すよりも先に大切なことがある。
「冷めちゃうからさ、早くご飯食べようよ。」
3/7/2026, 8:14:24 AM