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無色の世界

 無色の世界に色を付けてくれたのは、君だった…。

僕の世界に色はない。
「おい、早く起きろ。」
いつものように、朝からうんざりする声で母親から起こされる。
「おはよう。」リンビングに行って声をかけた。
「…」返事はやはりない。これもいつものこと。朝ごはんは自分の分は用意されてないので、自分でする。パンをトースターで焼く。その間に洗面所でバケツに入った雨水で顔を洗ったり、歯磨きをしたりする。ちなみに、この雨水は、3日前の雨の日にとれた。自分だけは、水道の水を使っちゃいけないし、使わせてもらえない。
リビングに戻り、トースターからパンをとりお皿にのっけていると姉が僕の手を叩いた。パリンッとお皿が割れた。落ちたパンを先に拾おうと手を伸ばすと姉が素足でパンを踏んでいた。
「皿片付けてよね。キレイに。」とにやにやとパンを踏みながらこちら側を見ていた。僕は勿論反論は出来ない。ここで反論をしてしまうと家をなくしてしまう。まだ僕は中学生だからそこは避けたい。するとドタドタ足音が聞こえた。
「うるいなぁ。朝から、誰だ!皿を割ったやつは!掃除しろ!」と父親が言う。僕は
「僕が割りました。すみません。今片付けます。」そう言い、片付けを始めた。片付けが終わる頃には、登校しなければいけない時間だったので急いで家を出る準備をし、姉が踏んだパンを仕方なく食べながら行くことにした。
学校だけが僕の唯一の居場所だ。みんなが優しいから、僕も温かい気持ちになる。そんな、うきうきの気分で登校していると後ろから
「わぁッ!驚いた?」と僕のクラスメイトの女の子が驚かしてきた。
「毎日驚かされたら、驚かないよ。」と微笑みながら僕は言う。そしたら、
「えぇ〜!じゃあ何したら驚くかな?」と。僕は、
「何があるかな?」ととぼけてみせる。その後、歩きながら、彼女の今日はどんな色が空にあるとか、好きな色の話をしていた。彼女の目には、キレイにこの世の中が写っていると思うと、僕も見たいなぁと歩きながら思っていた。すると彼女は急に深刻そうな顔をして、
「ねぇ、そのパンどうしたの?すごく潰れてるよ?まだ、続いてるの?」と僕は
「うん。続いてる。このパンは、姉が足で潰したんだ。」バレないように、笑顔を作って言う。
僕の家庭の話を知っているのは、この娘だけ。この娘はいつも僕のことを心配してくれている。だから、僕もこの娘に心配かけたくない。我慢をする。だけど、このとき僕は本音が小さく漏れた。「僕の世界にも、色があったらな〜」。この言葉を、この娘は聞いてたみたいだった。
学校が終わり、下校しているときにあの娘が
「いいもの見せてあげる!だから、ついてきて!目をずっと開けててね!」といい、二人で走った。走った先についたのは僕の家だった。
「なにするの?」と僕が言うと、
「まぁまぁ、見といて!」といいその娘のあとをついてった。家の中に入ると、父親はタバコを吸いながらお酒を飲んでいて、母親は僕のバケツの水を捨てていて、姉はテレビゲームをしていた。その中に、僕とこの娘が居ると分かった瞬間僕をいつものように殴ろうと父親がこっちに来て手を振り上げたとき、僕は目を閉じ体勢を整え待っていたらいっこうに手が来なかった。むしろ、悲鳴が聞こえた。僕は、目を開けると女の子が包丁で父親の腕を切っていた。
「ぎゃぁぁぁ!」
とあちらこちらで聞こえる声に驚きながら彼女を見た。彼女は笑顔で
「目を絶対に閉じないでね!」とだけいい僕の家族を刺しに行った。
あれから、何時間たっただろうか悲鳴すら聞こえなくなった。みんな死んだのだ。女の子は血まみれになった顔でこちらに振り向き、
「ねぇ!色見えた?きれいな色してた?」と。
今まで無色の世界だったのが、君に本音をつい漏らしただけで僕の世界に色を付けてくれた。だから僕は、

「うん!とてもきれいな赤色だった。」と笑顔で言った。

4/18/2024, 1:02:16 PM