ゆらゆら、ゆらゆら。
遠くにみえる水面から差す光に目を細める。いつも通り暗い水底でボーンと鈍い水の流れる音をただ聴いている。
もうない。なくなってしまった手で、足で、この口で。
どうしょうもなく眩しい記憶をもう一度、なんて。
本当にわかっているんだ。頭では理解しているの。
それでも諦めきれずに何度でも願っては視界を閉じ、変わらない景色の中で目覚めて落胆する。悲しいとか、寂しいとか。怒りや憎しみなんてとうに擦り切れてしまった。
思い出すのは目には見えない温かさとその心地よさだけ。
この冷たい水の中で、それだけが唯一の光なんだ。
【題:一筋の光】
11/5/2023, 10:57:12 AM