生粋

Open App

【自転車に乗って】


初めての自転車は

友だちよりもだいぶ遅かった

本人は特に気にした事はなかったが

一緒に遊んでる友だちの自転車を走って追いかける

その姿を見て不憫に思ったば~さんが

買ってあげたら?と

お金を出してくれたらしい


特に欲しかった訳ではなかったが

買って貰えるとなれば話は別だ

お袋に連れられて行った町の自転車屋さん

一際目を引いたのは

天井からぶら下げられた

仮面ライダーの自転車

少年の瞳にはもうそれしか映らない

予算オーバーだったのだろう

お袋は困ってたようだが

そんな大人の事情

少年の俺は気づかない

結局、お袋が根負けし

家にピカピカの相棒がやってきた


快晴

うちの前で相棒に跨がる

ハンドル前にはカゴの代わりにライダーバイクの形

キラキラと輝く金属部分は誇らしく

大地に伸びた補助輪が頼もしい

この相棒となら何処へでも行ける

ライダーのように崖を飛び越え

空だって飛べる気がした

テレビで見たETの影響もあったと思う

乗り心地を確認しながら練習開始

相棒とうちの前を行ったり来たり

しばらくするとお袋が様子を見に出て来た


万能感溢れる少年は

母親の前でキュッと止まり

後ろに乗りなよと振り返る

お袋はまたも困った顔

しつこく誘うヒーローに

中年ヒロインは恐る恐る後ろに座った


ハンドルを握り

ペダルに力を込める


瞬間


ホントに空を飛んだ

浮遊感と視界に広がる雲ひとつない空

空回る車輪が照り付ける陽射しを反射してキラキラ光る


見事にひっくり返った

大地の上にお袋

その上に俺

俺の上で相棒は無傷だ

何が起こったのか理解出来ず

しばらくそのまま空とカラカラ回る車輪を眺めた


その後

中年ヒロインは

腰を押さえしばらく寝込んだ

8/14/2024, 12:34:32 PM