冬休みは嫌いだ。
12月24日 15:30
起立、気をつけ、さようなら
放課後を告げる号令とともに、教室内には解放的な空気が堰を切ったように流れ込んできた。それもそのはず。
「明日から何しよっかなー」
「俺は部活だ」
「てか国語の宿題多すぎない?」
「絶対正月太りしちゃう、今のうちに痩せなきゃ」
「てか明日クリスマスじゃん」
この時期になると、目の前のクリスマスと少し先に見える正月のことでみんな頭がいっぱいみたいだった。
でも自分は、冬休みが嫌いだ。
なんでってそりゃ、部活の冬練がキツいから。
目が覚めた。冬休み初日、朝早く部活に行く為だけに起きて、校舎内を延々と走り、時にはサーキットトレーニングをして、最後は部員全員で筋トレ。
これだから、冬休みは嫌いなんだ。
単調なメニューは飽きるし、外でノックを受けたい。
あっ──────
校舎内をランニングしてる途中、音楽室から合唱部の歌声が聞こえてきた。この声の中に あいつ も居るのかな。なんて考えると、少しペースが上がった。別に見られてるわけでもないのになんて健気なんだ。思春期の男なんてそんなものでしょう。
いつも通り部活を終え、玄関で靴を履き替えていると偶然にも あいつ に出くわした。自分も向こうもお互い友達を連れてはいなかった。内心の高揚感を悟られまいと平然とした態度を貫いて挨拶する。
「おつかれ」
「おつかれ〜!今日野球部も部活だったんだね〜」
「うん、マジで筋肉痛になる、てか──」
合唱部もまだ部活あるんだ、なんて言葉を遮ってきたのはあいつだった。
「駅まで1人?私は見ての通り1人」
冬休みは嫌い、だった。そのはずだった。
本当は、あいつになかなか会えなくなるのが嫌だった。
部活なんてむしろ、あいつに会えるチャンスでもあるから頑張れた。それでも会えないことが多かった。
だから、冬休みなんてなくていいのになって思ってた。
でも、今日は雪の上に2人の足跡が並んだ。
こんなことなら、ずっと冬休みでいいのにな。
12/28/2024, 6:52:14 PM