よらもあ

Open App

もしも未来を見れるなら、そう強く思って金毛の羊は宝瓶宮にその四つ脚を踏み締めてやってきたのだ。

みずがめ座の聡明さ、冷静な分析力は予言と言っても過言ではない。それだけではなく、通説から外れた発想力は他の追随を許さない。
通訳のいて座を引き連れて、いざ、みずがめ座に対峙したおひつじ座だったが、2分後には撃沈してめえめえ鳴いていた。その次の瞬間には回復しているのでその立ちなおりの速さはさすがだなと通訳のいて座はいつものように笑んでおひつじ座を見守っていた。助けを求められないかぎり手も口も出さないからこそ、おひつじ座も通訳にいて座を選んでいるのだ。

おひつじ座が改めてめえめえと鳴くのにはわけがある。
そろそろ開催される流星群のレースに向けて、一攫千金を狙っているのだ。
そういう俗っぽさも嫌いではない、といて座は思うからこそおひつじ座に付き合っているが、みずがめ座は流石の難攻不落とでも言うべきか、興味がないわけではなさそうだがおひつじ座がかわいそうなくらいにレース予想のお願いを一蹴したのだ。
特に隠さず肩を震わせ、口元に空気をパンパンに入れて耐えるいて座のことすら、みずがめ座は面白くなさそうに一瞥しただけだ。
機嫌が悪いのではなく、興が乗らないのだ。ましてやあのみずがめ座のことだ、白を黒と言うのが当たり前な相手に真っ向勝負で賭けの必勝法を聞いたところで素直な答えが返ってくるわけがない。
それでもおひつじ座がめえめえ鳴くので、いて座は本日の業務と思って通訳をこなす。

「レースで勝ったら、白羊宮に美味しい草を植えて羊たちにいい羊毛を作ってもらうんだと。それで、それを冬がくる前に星たちにどうしても贈りたいらしい」

無表情なみずがめ座の表情が、本当にわずかに変化した。
見る人がみなければ分からないほどほんの少しの変化だったが、なんだかんだで情にあついみずがめ座のことを思えば、その表情の変化をいて座は見て見ぬフリをする。
しかしみずがめ座に必勝法を教えてもらったとして、おひつじ座が理解できるのだろうかと、いて座は口には出さずに通訳にただ徹していた。

もしも未来を見れるなら、今冬は星たちが暖かいウールに包まれているだろうと分かっていたからだ。





“もしも未来を見れるなら”

4/20/2024, 8:18:05 AM