よあけ。

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お題︰窓越しに見えるのは

窓越しに見えるのは暗闇と水滴とそれらを照らす街頭とつまんなそうな顔。
「みんな消えてしまえばいいのにね」
オレンジの光が黒目を輝かせている。
言葉と瞳が不釣り合いで、それが妙に魅力的に見えた。
キラキラ、彼女の黒目は輝いている。
「この水滴も蒸発して消えて無くなる」
窓越しに視線をこちらに向けた彼女は続けて言った。
「時折、その前に舐め取ってしまいたくなるの」
確かに、その眼球は舐めてしまいたくなる。
「涙は塩の味がするというけど甘いときもあるそうよ」
このとき初めて返事をした。
「甘いときはどんなときか」
「優しい感情は甘い味ね」
「悲しいは優しい感情と言えるか」
このとき初めて直接目があった。
「あら、知ってるじゃない。嬉しいが優しい感情と納得できるなら、悲しいも優しい感情と納得できるはずよ」
返事はできなかった。
彼女はどこか嬉しそうな顔をして窓へと視線を戻した。
「貴方の涙はどんな味?」
甘い味がする。
「みんな消えてしまえばいいのにね」
窓越しに誰かの影を見ている。
彼女は笑った。

7/1/2023, 2:12:06 PM