カレンダーには、後一週間後にマルがついている。付き合って2年、記念日として。
けれど、その記念日はもう二度とやって来ない。その記念日の3週間前、私は付き合っていた彼氏から、別れをきりだされたのだ。
「一方的だよー!!酷くなーい!!」
「はいはい。あんまり飲まない。」
私の持っていたビールのコップを優しく手から剥ぎ取られた。
それでも私は続けて愚痴をぶちまける。
お酒の力に任せて。
「大体、理由もないけど別れて欲しいって何さっ!!ぜっーたい、他に好きな人ができたんだろーがっ!!ばーか、馬鹿っ!!!!」
我ながら、凄い醜態を晒しているなと思いながらも、一度流れた気持ちは留められない。
「もう。わかったから、それ以上飲んじゃ駄目。それに、もう帰ろう。送ってく。」
私のことをずっとなだめているのは、大学時代の男友達、博雅(ひろまさ)たまたま再会して、飲み屋入ってのこの状態。
けれど、こうして素でいられて、私でいられる唯一の人でもある。
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「はー、、家だー」
私こと、千晴(ちはる)は、博雅に連れられ、私の家のベットまで運ばれた。
「はい、お水。飲める?」
「飲めるよ?のめりゅから、そこ置いといて、えへへへへ」
「ふーん。酔ってるなーもう」
彼女は、俺が彼女のことを慕っいるなんて知らない。千晴が別れたと聞いた時、正直チャンスだと思った。行動できず、好きな人を失った俺は男友達としてずっと過ごしていた。
連絡しよう、連絡してみよう、そう思っていた時の偶然の再開。
これは、運命だと、勝手に思った。
「あー。おい、何脱ごうとしてんの」
千晴は寝ながら服を脱ごうとしている。
勘弁してくれ。
「だっーて、暑いんだもん」
「暑いからって半袖脱ごうとしないでよ、えーっと、エアコンのリモコン、リモコン」
パシッ
彼女に、腕を掴まれた。
千晴に触れられ、ドキッとした。
時が一瞬止まった。
「博雅…、…今日、ありがとう。ごめんね…私、何か、凄い、醜態さらして………、久し振りに会えたのに……、嫌だったでしょ……っほんと……っ、ごめんね………」
千晴は、段々と涙声になって、声も、弱々しくなっていった。
「………嫌じゃ、無かったよ………、合えて嬉しかったし、声、聞けたし、千晴、大人な顔になったけど、今でも、とっても可愛い、」
「……………えっ?」
鼻をすすりながら、千晴は少し顔をあげた。
千晴に掴まれた腕を利用し、俺は千晴の元へと顔を近づける。
近づけてしまったら、何かが変わるかもしれない、壊れてしまうかもしれない。それでも、止められない。
「千晴、ずっと好きだった……。」
静かな部屋に、エアコンがかかった轟音が響く。千晴の顔は、赤く染まっている。
近くで見た千晴の顔は、とっても可愛かった。
9/11/2023, 9:00:47 PM