私の聖域。人として大切なものを取り戻せる場所。
小さいけれど居心地が良くてかわいいが溢れたお花屋さん。世界でいちばん素敵な人のお店。
「最悪です。」
「ふーん。そりゃ良かったね。」
これは夢?いいえ、夢であっても許せない。
「何故あなたが。」
「花買いに来る以外に用事ある?」
「余所に行けば良いじゃないですか。」
「何そんなキレてんの。お前には関係ないだろ。」
ああ最悪。この男に会ってしまうなんて。
どうして。なぜ。このお店なの。お花屋さんは他にもあるでしょう。
「用が済んだらさっさと出て行ってください。」
「はは、何様だよ。お互いただの客だろ。」
聖域が汚れる。ああ最悪。最低。
「…あ、あの、お待たせ、しました…。」
私の太陽。アポロン。今日も格好良くて可愛らしい。
その力強く美しい手には純真さと妖艶さを併せ持った白いバラの花束が。そして。
「どうも。きれいだね。ここで頼んでよかった。」
「あ、そりゃ、それは…どうも。」
この男の手に渡ってしまった。ああ最悪。
「それじゃ。また。」
また?またって言ったの?また、なんて無いの。
そう、あってはならないの。もう二度と。
「あー、ええと…。」
どうやら憎しみで我を忘れていたらしい。時間を無駄にしてしまっていた。あんな男のために。ああ最悪。
「ごめんなさい。今日は…」
「…良いのか、追いかけなくて…。」
「え?」
「…さっきの。男前を。そういう関係じゃ…?」
「え?」
私が?あの男を?あの男と?
「…いや、あの、恋人…彼氏じゃないのか?」
ああ
最悪
6/7/2024, 9:45:43 AM