無風

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奥さんが死んで家を掃除することにした。
孫達に手伝って貰って予想よりも早く片付いた。残るは庭、倉庫だけだ。
倉庫の鍵を手に外に出た。

ふと目線を向けると蜘蛛の巣に犯された奥さんの自転車が倒れていた。きっと昨日の台風のせいだ。隣にある自分の自転車は何とか無事らしい。

倉庫の鍵を開けると孫たちが風のように入っていった。自分も何があるのか覚えていないから除くように全体を見渡した。

そこには砂埃にまみれた赤い自転車と、小さな青い自転車が並んでいた。

まだ小さかった時自分が乗っていた自転車だ。小さいのは小学生の時、赤いのは高校の時使っていた。懐かしい。

「この自転車まだ乗れそう」

孫は誇りを払い空気を入れて乗ってみた。案の定タイヤのゴムとブレーキが壊れていてまともに使えない。

作品No.003 課題「自転車に乗って」題名「時系列」

8/14/2023, 11:16:20 AM