宵風に吹かれたい

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施設で読んだ「true love」って小説。正直、僕には縁のない話だった。親に捨てられてここに居る。みんな赤の他人だ。真実の愛なんて、存在しないことを知っている。

でも、この夫婦は僕を引き取った。どうせすぐ捨てるんだ。それなら、期待なんてしたくない。
そう、思っていたのに。毎日用意してある朝ご飯、お弁当、夜ご飯。毎朝送り出してくれる「行ってらっしゃい」夕方には「おかえり」が待っている。
でも、信じたくない。傷つきたくない。もう、嫌だ。
自分を守るために、ずっと夫婦を拒絶した。
それなのに、今日家に帰ると、机の上にホールケーキが置いてあった。誕生日おめでとうって。
あぁ、本当は信じたくないのに。だけど、少しだけ期待をしている僕がいる。
もう、信じても良いの?幸せになれるの?

あぁ、コレが、あの小説で読んだ真実の愛って事かな。
やっと分かったよ。
この人達が僕の自慢の、父さん母さんだ。

7/23/2025, 1:49:39 PM