曖昧よもぎ(あまいよもぎ)

Open App

俺はミミズが嫌いだった。いや、今も嫌いではある。
駅に向かう道中、俺はアスファルトの上で干からびているミミズを何匹も見かける。何故こんなにも温度の高いところにでてきてしまうのかは分からない。以前踏みかけてからより鬱陶しく感じるそいつらを、絶滅させたいとも思った。
ミミズは他の虫とは違う。環形動物とやららしく、なんかうにょうにょしている。泥みたいな色をしてるし、動き方もなんか嫌だ。コンクリートジャングルに住む俺と、畑に住むあいつらは分かり合えない運命なんだ。
「あっ」
思わず足を止める。ミミズだ。しかもまだ生きてやがる。
そのとき、俺の中で謎の好奇心が作用し、地面にしゃがんで子供のように観察してみることにした。一応スーツを着た社会人男性だが、人が通らないタイプの田舎なので関係無い。
ミミズの動きは蠢くというか悶えるというか、それでも懸命にからだを動かし水を求めていた。なんだか今の会社内での俺みたいだ。
こいつも、生きてんだな。小さき命から熱い鼓動を感じた文月。


二十三作目「熱い鼓動」
ミミズという生き物は、曖昧にとって特別。好きではないけれど。

7/30/2025, 12:18:04 PM