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僕と一緒に

「僕と一緒に星空を見に行こう。」
僕はそう言って、君の手を引いた。
満点の星空が見える場所を、僕は知っている。
勉強が嫌になって1人でふらついていた時に見つけた場所。そこには誰も来ない。時々僕が独り占めしていた秘密の場所だ。


君は今日、とても暗い顔をしていた。何が君をそうさせたのか、僕には分からなかった。
「どうしたの、なにかあった?」
そんな言葉でも掛けれれば良かったのに。なにか変に思われないかと躊躇ってしまった。
それでも君の顔を晴らしたかった。それで思いついたのは、あの場所。部屋に閉じこもりで、全てが嫌になった僕を、ちっぽけな存在にしたあの場所。
君を連れて行きたい。そう思って、気がつけば君の手を引いていた。


夕暮れ時で、太陽から遠い方の空はもう暗くなっている。夏も終わりかけの今日は、日が沈むのも早いし、それを待っていても暑くはなかった。




「星空、綺麗。」
それだけを、君は呟いた。

「そうでしょ。僕の秘密の場所なんだ。気に入った?」
反応を見たかった僕は、ぎこちなく聞いた。

君は少しだけ楽そうな顔をして頷いて、またいつもの顔に戻ってしまった。

9/23/2025, 12:41:39 PM