白眼野 りゅー

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「8月って、一年で一番、会えない人に会いたくなる月だよね」
「この恐ろしい暑さの中で、よくそんな叙情的なことを考えられるね。絶対そんなロマンチックな月じゃないよ。暑くて死にかけるだけの月」
「そっかぁ」

 ――君がいなくなって初めての8月。彼女言葉の正しさを思い知る。


【恐ろしく暑い8月にこそ、近くの空の君に会いたい】


 人生で初めて、精霊馬なんて作っちゃった。そんなことをしても、

「不器用だなあ、足の長さが揃ってないじゃん」

 と笑ってくれる君もいないのに。……それでも。

「これじゃあ乗り心地が悪いじゃない。来年はもっとマシなのを頼むよ?」

 と叱ってくれたら、なんて妄想してしまうのも、8月の魔力のせいなのかな。

「……それか、僕が迎えに行けたらな」

 吸い込まれそうな太陽。今なら、何も特別なことをしなくても、外に立っているだけで君の元へ行けるだろう。

「……ああ、だから8月に会いたくなるのか。こんなに空が近いから」

 本当に、君の言う通りだったな。

8/2/2025, 6:45:16 AM