彗星

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題:貴方は、私は

「こんにちは、お姉ちゃん!」
 その声にハッとして振り返った。
 その声の主は、紛れもない幼い頃の“私”だった。
 そして“私”と手を繋いでいる人は、死んだはずの“ママ”だった。
「……………は?」
 長い沈黙の後、出た言葉はその二文字だけだった。
(なんで幼い頃の“私”がいる?なんで死んだはずの“ママ”がいる?なぜ“あの頃”のキノコ王国なの?さっきまでリンクさん達といた筈……。時が戻ったのか?いや、時属性の魔法は原理が解明されていないし、そもそももう存在していない。ならなぜ?なぜ生きている?……)
 私の頭の中で、無数の疑問が浮かんだ。
 考えすぎて頭がおかしくなったようで、突拍子のないことを言ってしまった。
「体に異常は」
「え?えーと……“私”も“ママ”も元気よ。ね」
「ええ。定期的に検査はしているけど、特に異常はありませんわ」
「……………そう、ですか」
 これは明らかに私の過去の記憶とは違う。似ても似つかないもの。
 ーーパラレルワールド?
 馬鹿馬鹿しいとは思うが、それしか思い付かなかった。
 だって、これが仮に時間が戻っただけのものとしても、私の過去の記憶にここに立ち寄った記憶も、ここでママと手を繋いだ記憶もない。
「……どうして生きてるの?」
「……どういうこと?」
「………」
「“あっち”の世界でも見守ってるわ」
「っ!」
 瞬間、目の前が真っ白になった。

✧ ✧ ✧

「あ、ロゼッ……ええっ!?」
「なんで泣いてるんですか!?」
 帰ってきたらしい私は、二人に困惑の眼差しを向けられた。
 泣いてるって……泣いてる自覚、なかったんだけどなぁ。
「あはは……」
「あははじゃなくて!」
「涙拭いてください!」
 本気で心配してくれる二人ですが、私は路上で泣きながら笑った。

お題『パラレルワールド』

9/25/2025, 12:21:20 PM