ふとした瞬間、坊主は綺麗に見える時がある。寝る前にメガネを外して世界の輪郭がぼやけた一瞬とか、あいつの好きなでっかいカップにココアを入れて飲んでる横顔とか。正面で捉えるとまん丸の輪郭も、横から見れば端正な骨格とわかる。
「……真田さん何見てんすか」
「お前、ジョッキでココア飲むやつおらんぞ」
「ジョッキちゃうすよ、ただ大きいだけ」
「おっさんみたいに飲み干しおって、どの面下げて言っとんじゃ、このポンポコリンが」
愛嬌だって1ミリもない。仕事のし過ぎでかけ始めたメガネだって、俺より似合ってない。
「まだ残ってますけど、飲みます?」
「俺はええ。まだカップ残ってるから」
「さいですか」
「誰かさんと違って砂糖中毒ちゃうからな」
ふと眉をしかめて、ジョッキの中の氷をガラゴロ言わす。いやジョッキやん。テーブルビシャビシャなってんで。でも丸太の中ではマグカップ。
「でもありがとな」
「……っす」
そう言って俯くと、短く切った髪を掻き回してまたココアをグイッと行った。俺のマグカップの3倍くらいあった中身は、一瞬で等しくなった。
4/27/2025, 11:46:48 AM