20歳
息が途切れそうになる。跳ねるたびに、体中の関節が声を上げ始めた。
長い坂だった。何回も走り込んだ馴染のコース。若い時には、すでにラストスパートをかけていた。だが、ここ数回の大会で、それが戦略ではなく若さだと気付いた。競技場に近づくにつれ、増える歓声に踊らされていた。
前方の背中が大きくなってきた。若い背中だ。左右に揺れが見える。
トラック勝負にはさせない。クライマックスの歓声は、20歳の若者に火を入れる。
スパートをかけた。最後の角の手前で並び、外からの右折で一気に追い抜く。背後の気配が遠ざかる。残り50メートルは歩いてもいい。そのつもりで飛ばした。彼の心をここで刈る。
彼は間違ってはいない。そういうものなのだ。そういう走りでいい。
1/10/2024, 10:54:25 PM