光も届かないほどに分厚い雨雲。
僅かながらの太陽の温もりさえも奪う天。
なんて意地が悪いんだろうと睨みつける。
しかしながら、そんな行動になんの意味があるわけもなく。
ただ、ただ。無慈悲に降り注ぐ冷たい冷水が顔を落ちるばかりであった。
私が此処で立ち止まろうとも、時間は止まってくれはしないのに。私が此処で涙しようとも、誰かが気づいてくれるわけでもないのに。こみ上げてくる曇天よりも真っ黒な感情、これを抑える術など知らない私は、ただひとり。唇をかみ締めながら、静かに雨に打たれるばかりだった。
ばちゃばちゃと耳障りな程に煩く地面を叩く雨の音。コンクリートの上に荒々しい波紋が無限に生み出されていく。その足元にぽつり、落っこちていた小さなうさぎのぬいぐるみのキーホルダーにふと気がついた。
そっとすくえば、濁った水がぼたぼたと指の隙間からこぼれていく。元来柔らかかったのだろう毛を黒く汚して、びっちょりと水を含んでいる。その子の頭で、本来はくっついているはずのボールチェーンが外れてしまっていた。
「……君も、泣いてるの?」
当然返事などあるわけないのだけれど、何故かその誰のものかすら知らない可哀想なぬいぐるみが、私の心に小さな小さな傘をさしてくれた気がしたのだった。
“ 泣かないで”
12/1/2022, 7:44:32 AM