自分と相棒、二人しかいない電車の中。
心地よい音をたてながら揺れる車内。
流れる景色を見ながら、ぽつりと呟いた。
「このまんま、遠くに行けたらなあ」
「珍しいな、そんなこと言い出すなんて」
「なんとなく思ってさ」
「行きたいのか?遠くに」
「そうできたらいいな~とは思ってる。…このまま、誰も知らないところまで行ってさ、そこでお前と二人で暮らす」
ぽつり、ぽつり。
小雨のようなテンポで会話が続く。
「俺もついてく前提かよ」
「お前いなきゃ意味ねえよ」
「なんで」
「…もう嫌なんだ、お前が一人で遠くに行くの。どうせ遠くに行くなら、オレと一緒に行ってほしい。ずっと一緒がいい」
「………」
「お前一人だけ、いなくなんなよ。な?」
「…」
言葉がなくなった。
ガタンゴトン、心地よい音だけが響く。
互いに目を合わせることもなく、ただ景色を眺めていた。
景色から目を離さないまま、相棒が肩を寄せてくる。
景色から目を離さないまま、それを受け入れた。
「俺のこと好きすぎだろ」
「うん、世界一」
【遠くへ行きたい】
7/3/2025, 11:33:17 AM