#30 『待ってて』
ここで待ってて、と言って、
マサルくんはどこかに行ってしまった。
僕は言われたとおり、いつも遊んでいる公園のブランコに揺られながら、待っていた。
オレンジ色だった空がいつの間にか深い藍色に変わっていった。
そろそろ家に帰らなきゃ。
ママが心配しちゃうな……。
でも僕が帰って、マサルくんが公園に戻ってきたらどうしよう。
約束を破ったら、マサルくん怒るかな、それとも悲しむかな。
僕は少しオレンジ色が残った空の上の三日月を眺めていた。
あの三日月がいなくなったら、帰ろう。
もしマサルくんが怒ったり、悲しんだりしたら、三日月が家に帰ったからって言い訳をしよう。
僕は三日月を眺めながら、大きくブランコを漕ぎだした。
2/13/2023, 1:08:04 PM