『ようこそ、故人図書館へ。』
「こんばんわ。…今日は生憎の雨だね。」
『おや、雨はお嫌いですか?』
「雨が起こすメリットは素晴らしいと思うよ。でも、雨は少し残酷だからね。」
『雨があるからこそ、始まる生命がある。そんな雨は、残酷ですか?』
「雨は全てを流してしまうからさ。」
『それもそうですね。まぁ、嫌な事は消えませんがね。』
「司書さんも何かあったの?」
『私の事はどうでも良いのです。それより、何かご用でしょうか?』
「…悩み事があってね。僕の人生って薄っぺらいなぁって思えちゃったんだよ。」
『どの人間も、外から見たら薄っぺらいものですよ。』
「じゃあ僕のは特段だよ。起承転結のない物語だよ。」
『それならば、今から始めてみませんか?貴方様だけの物語を。』
「…始められるかな?こんな平凡な僕に。」
『ええ。私がお見受けした所、貴方様の言葉は他の皆様よりも秀でております。貴方様は決して凡ではございません。私が保証しましょう。』
「…司書さんって意外といい人?」
『一人の人間の悩みなんて、私にはどうでも良い事です。ですが、最近の本は面白味に欠けるものばかり。丁度飽きてきた所でしてね。』
「成る程。僕は只の暇潰し要因ってことね。」
『私と貴方様の悩みが同時に消えて喜ばしい事ではないですか。』
「確かにね。…じゃあ待っててよ。すぐ最高の物語をお届けするからさ。」
『心から、お待ちしております。』
『人間とは実に奇怪。悩み、苦しみながら、終わりに向かって歩んでいく。終われば、また始まっていく。狂っているとしか、言い表せませんね。』
『本日も貴方様の人生という名の物語をお待ちしております。』
3/12/2025, 11:34:17 AM