心と心が通じ合ったような気分になった。
流れ星に手紙を乗せて、遠くの人と文通した。
文通相手は女性だった。同性。それも同年代。学タブ上の、イケナイ関係。ネッ友という関係。
悩みを相談したのがきっかけだった。
最近親に怒られたの。そう呟いたのがきっかけ。
誰も観ていないと思っていた。
でも、来た。それがファーストコンタクト。
ネット上だとしても、肯定してもらえたことがとても嬉しかった。
こんな日が、ずっと続けばいいと思っていた。
現実よりもネット上ばかりを気にするようになった。
いつしか学校は二の次になり、徐々に休みが多くなって、そして不登校になった。
でも、それでも……、ネッ友はそれを肯定してくれた。
休んでいいんだよ。学校なんか、無理に行かなくていい。それよりもさぁ、といって。現実の時間を、チャットサイトで無限に溶かした。
小中学生の関係なんてその期間だけのものだ。卒業したら縁が切れる。
でも、ネッ友なら、ネットが存在する限り、ずっと一緒。
日に日に、ネッ友に依存するようになった。
でも、ネッ友の方は、嫌がったらしい。
それはそう。
不登校なのは自分。一方その頃のネッ友は学校に行っている。平日の昼間は自由だと思っていたけど、実際は義務教育に行かなかったから得た自由なのだ。
夜なら良いだろう、夜更かしすれば良いだろうと勝手に思っていた。送った。送った、連鎖して送った。
送ったコメントに、いつまでも反応してこない。
翌日の朝とかに返ってくる。そうじゃないんだよ、って束縛しようとした。
優先順位が狂ってる。学校よりも私じゃないの?
あなたが、あなたが学校にいかなくて良い、といったから、私は不登校になったの。
そうやって、いつからか責任転嫁して、ネッ友をネッ友じゃないようにしていた。
それって矛盾してるよ。ネッ友なのに、無責任なアドバイスしてこないでよ!
指先は激しいノックで学タブ画面を叩いた。
学校に行かないから、誰も注意しなかった。
「それが犯行の動機ですか?」
目の前が暗くなった。
目を伏せるように、頭を下げたからだ。
床しか見えない、取調室の部屋。
机を挟んで対面する警察の人は、どこか胡乱げだ。
「私はただ、理由が知りたかっただけなんです。傷つけるなんてとても……、はい。返す言葉もありません」
相手の親は、私が行ったネット上の粘着行為に開示請求を行った。
相手はトラウマで不登校になったのだ。その報復として、被害届を出した。
せっかく中学受験に合格したのに。
わたしとネッ友になったばかりに、その努力をふいにしてしまったのだ。
粘着していたのは、年末年始に追い込みの時だった。最も忙しい時だったのに……私は。
。
警察の、人として見ていない目が、私のすさんだ心を射抜いた。不登校のくせに、被害者づらするなよ、という。
こんな風に現実世界に理解者なんていない。
それがわかってるのに、どうしてネッ友を壊したのか。
学タブの画面で、反省の色がうっすら反射する。手遅れの嗚咽も反射する。
12/12/2024, 3:43:06 PM