彼女は笑顔で僕に言った。
「春が来たらお別れだよ」
僕はこの世界に於いて、僕はどうしようもなく無力だ。
情けなくてしょうがない。いっそ涙すら出てくる。
「なんとかならない?」
僕たちは、春に邂逅したら、別々の道を行く。
二人で話し合った結果でも、縋らずにはいられなかった。
喉が戦慄く。言葉が震える。
僕たちには将来があった。誓い合った未来があった。
今まで育んだ命が、恋が、全部春が来てしまえば理不尽に終わってしまう。
「嫌だよ、ずっと一緒にいたいよ」
「……私たちは別々になった方がいいと思う」
ああ、なんて不条理だ。
こんなクソったれな世界、大嫌いだ。
恋人たちを引き裂いて喰らう鬼がいる。名を「春」という。
お題/バイバイ
ご覧いただきありがとうございました。
よければ下からも読んでみてください。別の物語が浮かんでくると思います。
2/1/2025, 4:24:00 PM