約束の薬草を焼くそうだ。
村長が言うには、これで約束を破ったことになるそうだ。
「すまんな、英雄よ。村を、守るためには、こうするしか……」
そうして薬草に火を灯そうとした。しかし、それは燃えることを知らない。
村長はガクリと膝から崩れた。
「約束を破ることができないのなら……」
自害しようと首を掻っ切った。草だけ残され、雑草と混じった。
そのような理由により、約束の薬草は赤い色をしていた。明治時代の廃仏毀釈政策で廃寺となり、約束の詳細は敷地内を泥棒に荒らされ散逸してしまった。
末裔であるが、約束の者が訪れた。
この時代、出迎えてくれるものはいない。それでも良い。好都合だ。この到来を待っていたのかもしれない。
どこか日本風で、スラリと髪の長い彼女だった。
しゃがんで、植木鉢に約束の薬草を移し替えて、それから持ち帰った。
彼女は薬屋であった。薬屋に化けた化け狐。依然村長に助けられた女狐の子孫であった。
3/5/2025, 9:41:18 AM