※本日作者が頭痛により文章が一部簡略化していることをご了承ください。
「……あーあ、最悪だ」
僕は寝落ちして終点まで来てしまった。
しかも終電でだ。最悪だ。
こういう時に限ってホテルへ泊まれる程の金はない。
仕方がないので、待合室へ待つことにした。
すると、僕と同じようにスーツを着た男性が座っていた。
「あなたも終電まで寝てしまったのですか?」
僕は彼にそう言ってみたが返事は無い。
「終電で寝落ちは最悪ですよね」
再び言ってみたが、やはり彼からは返事が無い。
人見知りなのだろうか?
彼はじっとこちらを見たまま何も言ってこない。
ずっと僕のことを見続けている。
……怖い。
不気味だ。なんでこんなに見てくるのだろうか?
怖い。一緒にいたくない。
僕は急いで待合室を出た。
「……ふぅ」
怖かった〜。すごく焦った。
あの待合室へは行かないようにしよう。
僕は仕方がなく夜道を歩くことにした。
「ただいま」
「おかえりなさい。終電に寝落ちなんてバカねぇ」
「うるせぇ。仕事で疲れてたんだから!」
「はいはい」
「そんなことより、見たんだよ」
「え?見たって?」
「例の噂の幽霊」
「幽霊?」
「あれだよ、待合室の男の幽霊」
「……あぁ!終点駅の幽霊!」
「そうそう!あいつに会ったんだよ」
「えぇ!?確か友達があっちの世界に引き込まれたって話でしょ!?」
「そうそう!でも、ちゃんと対処したから大丈夫だった」
「対処って?」
「何も話さず目線も逸らさないでじっと耐えること。そしたら待合室から出ていってくれたぜ」
「わぁ、良かったね、引き込まれなくて」
「ほんとだよ。いやぁ、めっちゃ怖かったぜ〜。まさか自分が経験するとは思わなかったからな」
「寝落ちの乗り過ごしはするもんじゃないわね」
終点駅の幽霊。
彼は今日も終電後の夜を彷徨っているという。
■テーマ:終点
8/10/2023, 11:53:28 AM