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「……止まるなら、今がいいなぁ」

未だベッドの上、夢とうつつの狭間にいる君がぽつりとこぼし、眉を下げてふわりと微笑う。
愛しげに細められた彼女の目尻から、ころり、と涙の粒が頬を伝った。

身体を起こしてはいるものの、ぼんやりとこちらを見つめ目の淵に涙を湛える彼女を驚かせないよう、ゆっくりと手を伸ばす。柔らかな頬を包むと、すり、と手に頬を擦り寄せてきた。

本当ならいいのに

そう呟きながらぽろり、ぽろりと涙をこぼし、うっとりと目を閉じる彼女の頬を親指で拭いとっていると、細くしっとりとした二の腕が首に縋り付いてきた。

「……本当、いい夢。……会いたいなぁ」

泣き笑いの顔で頭へと頬擦りをする彼女の腕を無言で解き、そのままぽすりとベッドへ押し倒す。
上から覆い被さるようにして顔を寄せれば仰向けの彼女はえ、と目を見開いていた。

その表情を見て少しだけ溜飲を下げると、耳元に唇を寄せ「夢な訳あるか」と囁いてやった。夢であってたまるか。

え、でも、だって、と混乱している彼女の背を掬い上げるようにして抱き寄せ、「ただいま」を告げる。

そのまま縋るように彼女の肩に顔を埋め、ぎゅうと回した腕に力を込めた。




『時間よ止まれ』
/俺も会いたかった

9/20/2023, 4:21:42 AM