『大変申し訳ありませんが今回は――』
――またか。
最初の一文を読み切る事なく、届いたばかりのメールを削除する。鬱憤を晴らすならこれぐらいが良いところだろう。
四回目のバイト面接もまた、失敗に終わった。
そう決め込んで、SNSに不採用の愚痴を零す。変換候補に、面接日程のメールで使った企業名やらテンプレート並みの畏まった言語が出てきて鬱陶しかった。
イライラが募り、ついにはスマホをベッドに放り投げる。
あれほど求人サイトのアドバイスを聞いて志望動機を考え、履歴書を幾度と書き直し、今度こそと繰り返し続けたというのに。
――毎回、ここに辿り着く。
正直、先週の面接で「採用の場合のみお電話を――」の時点でもう諦めはついていた。ついてはいた、が。
それでも心の奥底では強く願っていた。憧れの店で働く事で綺麗とはいかなくとも、生活が彩られていくなら本望だった。
そして望みは絶たれ、未練を残しやり直していく。
まるで恋愛ごっこだと思った。
一目惚れし、理想を夢見ては恋文を綴り、想い人に愛を告白する。終いには玉砕。
言うなれば失恋。経験は無いが、人間を相手にしている時点でもう同じだ。フイにされた時の痛みはきっと大差ないだろう。
テレビで嫌というほど、各職種の上層部らしき人が人手不足で喘ぐ光景を見るが、慈悲の目を向ける気にもならない。勝手に苦しんでいろと思う。
人手が足りないと喚く所に限って、少ない人材を厳選している。質の高さを求め過ぎて、そこまで悪くないであろう者も切り捨てている。
そうして、募集しても人が来ないと錯覚しては企業が愚痴を吐くのだ。
この国で働く人間は、高望みしすぎているのではないかと思ってしまう。
対面してどんな人かを見ます、と言ったところで結局は上辺しか見ない。マニュアルを刷り込んだ時点で、綺麗事しか吐かない。
無味無臭なんて、信じたところで結晶しない。
完璧など、人間には存在しない。
醜さ、汚さ、だらしなさ――あらゆる弱さを覗くけば、唯一無二の輝きを見つけられるというのに。
恋だって、人の弱さで惹かれるものもあるだろうに。
「普通」はいつまでもそうなんだな、と溜息しか出ない。
――と、嘆いても状況は変わらない。悲しい事だが仕方ない。
残酷さを増して、次の面接の予定を決めてはカレンダーへ組み込む。今度の求人は駅前書店のアルバイトだ。
どこかの採用担当が、この「弱き人間」に振り向くまで、止める気は無いだろう。
6/3/2023, 4:55:24 PM