【特別な夜】※長文注意
コートを羽織って、靴を履いて、玄関へ出る。
扉を開けると冷たい冷気が足元を攫った。けど、そんなことは構わない。小さな音をたてて扉を閉めた。
夜の街は静かだった。吐いた息が白く曇る。首元寒いな…と思いながらも足取りは変わらない。マフラーでも今度買おう。いつの間に、こんな季節になったのか。空を見上げて思う。夜空は遠くのほうまで広がっていて、空気は澄み、星が息をするように瞬いていた。どっかのニュースでは冬の寒さが遅れてる、とか言ってた気がする。そんなありきたりなことを考えながら、夜の街に繰り出す。
僕は、夜の散歩が好きだ。この、なんとも言えない高揚感。世界で僕一人になったかのような、特別な気持ち。昼間の騒々しい街ではない、静かな街。厨二病だと思われても構わない。だって、この空気が好きだから。
深呼吸をする。冬の夜の冷たい空気が肺の中を満たしていく。そんな息の音は小さく、けど、生きるのには十分すぎる大きさだった。
夜は眠れない。一人、無音の寂しい自室にいると、息苦しいし、孤独を感じてしまい、結果、朝までオールすることになる。そんなことはもう二度としたくない。ここは広いし、なんとなく、色んな発見があるから、少なくとも、息苦しくはならない。でも、冬は寒いし、夏は暑い。そこは少し我慢しなくてはならない。
だんだんと眠くなってきた。帰ろうか、と考えたところ、
「あ…、」
雪が降ってきた。はらり、はらりと、ゆっくりと落ちてくる。地面に落ちると、積もらずに溶けて水になった。その姿はまるで、儚い命のように、小さく、弱々しく、そして、綺麗だった。
なんだか、今日は特別な夜だ。
ちょっとした、特別な夜。
今日は帰ろう。明日は少しだけ、いい日になるかもしれない。
1/21/2026, 11:33:30 AM