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失恋

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失恋をしたときの「心にぽっかり穴が空いたような」という表現は言い得て妙だと思う。








私はある男性に恋をした。話が面白くて誠実で優しく自分の芯をしっかり持っている人。人として尊敬出来る人だ。私はこの気持ちが抑えきれず、どうしても伝えたくなり、当たって砕けろの精神で告白することにした。

私は彼を映画に誘った。プランはこうだ。まずは最近流行りのあの映画を見て、その後一緒に映画館近くのカフェバーでディナーをする。お店を出て駅までの道にある橋の上で告白する。かなりベタかもしれないが何故か上手くいく気がしていた。

当日、私は、前日から悩みに悩んで決めたチェックのワンピースに身を包み、いつもよりもかなり時間をかけて隙のないメイクを施した。あまりキツくなりすぎないように、ほんのり香る練り香水を手首や耳の後ろに仕込んで、大事な日用のピアスをして家を出た。

彼と合流した。彼は私を見るやいなや即座に私の服装とアクセサリーを褒めた。そして顔をじーっと見ると、メイクの違いにまで気がついた。驚いた。でもすごく嬉しかったし、気合いを入れた甲斐があったと思った。そして映画館へ。彼もこの作品は気になっていたそうで、感想を言い合いながらカフェバーへ向かった。彼が隣にいる緊張感と高揚感で正直映画どころではなかった私は適当に話を合わせた。カフェバーでの時間はあっという間だった。本当に幸せだった。

そして帰り道。いよいよその時が来る。そわそわしてしまうが、悟られないよう必死でいつも通りを演じた。橋の上に差し掛かった時、思わず「わぁ...」と声が漏れる。一面の美しい夜景が広がっていた。思わず目を奪われる2人。「ここだ!」と思った。

「実は私、貴方のことが好きです」

彼は何も言わなかった。でも表情で分かった。私の告白が失敗した事が。でも彼は優しい。すごく言葉を選びながらごめんなさいの返事をしてくれた。



それから彼との関係はギクシャクした。当たり前だ。心底後悔した。前を向くなんて到底出来そうもない。でも世界は無情だ。私がどれだけ明日を呪っても明日が来るのだ。でもこれを乗り越えられた時、私は強くなる。前に進める。

6/3/2023, 4:22:33 PM