さくらもち

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「ねぇ、ねぇ…」

女児の声が聞こえる。

「ねぇ、ねぇ…」

肩を揺さぶる。

「聞こえてるでしょう…」

私は思わず布団をバサリと退け、睨む。

「うるさい!」
「やっぱり聞こえてた!」

女の子は青白い顔を真っ赤にさせて怒る。

「もう、本当に今の若者ったら。言っても無視する、
言ったら怒る。まるでアンドロイドのように冷徹だわ。私の時代はねぇ…」

私は22歳。10歳以上年下の彼女に言われたくない。
この幽霊は美桜。私のアパートにいるのだ。
どうやら、どちらかが成仏するまで取り憑かれるとのこと。

「さっさと成仏してよ!」
「いやだも〜ん。私のメガネを見つけるまで帰らないも〜ん」

迷惑なことに、生前のメガネを見つけるまで天国へ行かないと言うのだ。
トントン、とノックされる。

「小鳥遊さん、妄想ごっこもほどほどにしようじゃないか。知り合いに精神…コホン、失敬。ハートを治す医者がいるから、紹介しようか?」
「結構です!」

隣の佐々城じいさんは最初は優しかったのに、最近はハートを治す医者の話しかしない。
最近は美桜が勉強を邪魔するから、成績も良くないし…。
どれもこれも、こいつのせいだ。

「本当に、反省してよね! ねぇ、聞いてる?」

耳元で美桜が囁く。

小鳥遊の幽霊生活、続行。

4/22/2025, 8:28:17 AM