七汐

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2限が終わって昼休み。

1年の時はまあ、友達と食堂で食べたりコンビニで買った昼飯を空き教室で食べてみたりしたけれど、2年になってからは案外つるんだりしないもんで。
いつも通り食堂へ向かい、財布と腹の減り具合とじっくり会議をして昼飯を買い、いつもの席に座る。

”関係者専用”と書かれたドアが近くにある奥の隅っこにある2人席。
ウォーターサーバーが近いのが利点で、ドアが割と頻繁に開くのが欠点。
人通りが多い席はみんな座りたがらないからいつでも空いている。


今日は親子丼にしてみた。
おばちゃん曰く、いつもより安いのは畜産科でニワトリが大量に卵を産んだからだそうだ。
だし巻き玉子やオムライスなどメニュー表が黄色いと思ったらそんなことになっていたとは。
ふと見ると畜産科であろう人達が何やら忙しそうにしているが、心理学科の俺には関係ないしただ有難いだけだ。

具と米が1:1になるよう調節しながら食べていると、何か見られているような気がした。
気のせいか誰か友達だと思って顔を上げると、


俺の目の前の席、越しの机のその先にその女(ひと)はいた。
一瞬こちらをチラと見た後、左手で下ろした髪を耳にかけ、ご飯を頬張った。
たった数秒の出来事がスローモーションに見えた。
顔がタイプだったとか昨日見た女優に似てるとか同じ親子丼を食べていたからだとかそういう理由じゃない。
いや、かなり多めの普通盛り食べるんだとか思ったけれど。
そういったのではなくて、なんというか、凄く綺麗だと思った。
月並みな表現しか出てこないが、少し汚れた食堂に似合わない星の瞬き(またたき)を俺は見たのだ。



『向かい合わせ』

8/25/2024, 10:34:00 PM