真澄ねむ

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 推薦やらで進路が既に決定しており、のほほんとしているクラスメイトたちを尻目に、直子は毎日死に物狂いで勉強し、とうとう受験日がやってきた。勉強の成果を発揮できたかと問われると、首を傾げざるを得ない。でも、それなりに手応えがあったから、大丈夫なんじゃないかなという期待があった。
 二週間後の合格発表の日、どきどきしながら自分の受験番号を探す。無事に見つけ出して、ほっと息をついた。彼を含めて、のほほんとしたクラスメイトたちは、探すときの不安と恐怖を知らないのだ。羨ましいなと思う。
 まあ、何はともあれ、合格は合格だ。
 直子は立ち上げていたパソコンの電源を切ると、学校に報告するために、部屋着から制服に着替え始めた。なぜかはわからないが、直子の高校は、電話の合格報告だけでは満足しないのだ。
 面倒だなと思いつつ、学校に行く準備を進めていると、インターホンが鳴った。両親は仕事に出ており、家にいるのは自分一人。
 渋々と直子は階下におりると、モニターの電源をつけた。カメラには見慣れた人物――直子の幼馴染みで推薦で早々に進路が決まったのほほん組の一人――が写っていた。
(匠くんだ。……何の用だろ?)
 首を傾げながらも、直子は玄関に向かうと、扉を開けた。
「直子!」直子が扉を開けるや否や、彼が門を開けて中に入ってくる。彼は直子の前に立つと、満面の笑みを浮かべた。「合格おめでとう!」
 虚を衝かれ、目をぱちぱちとさせていた直子だったが、控えめな笑みを浮かべると口を開いた。
「あ……ありがとう」礼を言いつつ、首を傾げた。「何で匠くん、知ってるの?」
 彼は得意げに笑った。
「そりゃ、俺もチェックしたからに決まってるじゃん」
「わたし……受験番号教えたっけ……?」
 ますます困惑する直子をよそに、彼は直子の腕を掴んだ。
「合格したら、学校に報告に行くんだろ? 行こうよ」
 あのね、と直子は彼を睨めつけた。
「そのつもりで、準備してる最中だったの。鞄取ってくるから、ちょっと待ってて」
 そう言って、家の中に戻っていく直子を、彼は愛おしげな眼差しで見送った。
 ああ、四月からも君と一緒で嬉しいよ。

1/6/2025, 2:53:48 PM