一つだけ
とある学校の屋上。
二人の少年は、隅のほうで肩を寄せ合いながら、下の階から聞こえる喧騒に耳をすませていた。
本日は晴天なり文化祭。
そして、一人の少年が、今日でこの学校を去る。
さっきまで大勢いたが、空気を読んでか二人きりにさせていた。
二人の間に会話はない。一人が肩に頭を落とすと、もう一人は愛おしそうに眺める。
普段は能面を被っているとよく言われる彼だが愛おしい相手にはこんな顔をする。
二人に残された時間は後僅かだった。
「ねえ」
「なんだ」
「僕はこれから先どうなるか分からない。学校を去った後すぐに死ぬかもしれない。勿論明日以降も」
「……ああ、分かってる」
「だからね、一つだけ約束して」
"僕"は彼の手を握り直す。彼もまた同じことをする。
互いの体温を確かめ合うように、指を絡ませる。
"僕"は彼の目を見て言葉を紡いだ。
「どうか、僕を忘れないで」
4/3/2026, 12:23:07 PM