ほろ

Open App

昔から、何をするのも一緒だった。
外で遊ぶのも、おやつを食べるのも、高校受験も全部。
得意な教科も、好きな食べ物も嫌いな食べ物も、みんな一緒の双子の俺たち。
「ほんとに、あんた達はずっと一緒ね」
母さんが呆れたように言うのが、もはやお決まりになっていた。

「あのさ」

それは、ほんとに急だった。
双子の弟が、俺にだけ打ち明けてくれた秘密。
好きな人ができたんだ。
「さすがに兄貴とは被ってないと思うけど」
この人、と弟が指したのは、俺のクラスの集合写真。真ん中より少し右にいた、クラス委員の女の子。
「へー」
「応援して」
「うん、まあ、いいけど」
意外な趣味だなー、とか思いながら、弟の顔を盗み見る。
全部一緒だと思っていたのに、いつの間にか弟は、俺の隣から前に進んでいた。俺と一緒じゃなくても平気になっていた。
「なんか、変な気分だな」
「何が?」
「んーん、なんでもない」
寂しいけれど、全部一緒の人間なんていなかったってことだろう。できれば弟の恋が実るといい。そして、俺にも幸せを分けてほしいと、そう思った。

3/13/2024, 1:47:39 PM