空は曇天。もう少ししたら雨が降りそうだ。
まあ今は春休みだから別に雨が降っても何の支障もないんだけど、気分はどんよりする。
昼メシを食べて何もやることがない俺はうつ伏せになって適当にショート動画を流し見ていた。
「この間見た夢なんだけどさぁ」
急に何の脈絡もなくソファに寝転がってスマホを見ていた兄が俺の方を向いて声をかける。
「超でっかいビルの大広間っぽいところにさぁ、爆死した人の山があって」
「ちょ、ちょっと待って兄ちゃん」
まったく穏やかじゃない内容に待ったをかけたが兄はそれを無視して話を続ける。
「でも十数人くらいの子供たちは無事だったんだけど突然ば◯きんまんが現れてこう言うんだ。
『アンパ◯マンが来てるからあそこから助けてもらおう!』って壁に空いた穴を指差してさ」
「お、おぉ……?」
突然の幼児向けの敵役とヒーローの名前が出てきて困惑していると兄は少し暗い顔をして続きを話した。
「みんな飛び降りてキラキラ〜って星になって、残っていたば◯きんまんがこう言って飛び去ったんだ。
『アンパ◯マンなんていないのに……』って。
我ながら凄い夢だよねぇ」
……あまりにも酷い結末に言葉を失っていたが、とりあえずありのままの感想を伝えることにした。
「こっわ何その極悪なば◯きんまん。子供泣くよ?
ってか兄ちゃん、なんでそんな怖い夢見るの。精神状態大丈夫?」
「僕が怖い夢をよく見るのはお前もよく知ってると思うけどさぁ、原因がわかってたらこんな夢見ないよ。
で、悪い夢って誰かに話したらなんか良いらしいってネットに書いてあったからさぁ、これから見次第バンバン話すからね」
兄は怖い夢を月一回以上は見ると前に零していた。
……つまりここから月イチ以上で怖い夢の話を聞くことになるのか……?
「……いや、あのさ。まずは原因を突き止めるなり、ドリームキャッチャー買うなりしようぜ?」
「何個か買ったけど、あれ効果なかったよ?
それに先月お祓いもしてもらったところだし。
だから手詰まり。八方塞がり。というわけでこれからよろしくね〜」
兄はにこやかに笑い、そしてまたスマホに目を落とした。
……空は雨天。俺の心は雲り空。
3/23/2025, 1:13:26 PM