「絶対、一緒に合格しようね!」
一点の曇りもない目と目が合った時、私はこの結末を悟っていたのだと思う。あなたは素直で、真っ直ぐで、いつも夢だけを見ていて、挫折とか、不安とか、将来のことで思い詰めたことなんて、きっと一度もないのでしょう。
オーディションの合格発表。呼ばれたのはあなたの番号だけだった。ラストイヤーの私は、もう入ることの許されない部屋を抜け出した。誰とも会いたくなくて、薄暗い廊下を歩いた。家に着くまでは心を殺せるような気がした。
パタパタ駆けてくる足音が聞こえた。
リリ、と私を呼ぶ声。
振り返る勇気なんてなかった。
背中から抱きすくめられた瞬間、あなたの中の喜びと悲しみが押し寄せてきて、こらえていたものが溢れた。
「ごめんね」
その一言だけだったら、私は壊れていただろう。
だけど、あなたは私の耳元で懸命に言葉を紡ぐ。
「私、頑張るから。リリの分まで、頑張るから」
ずっと、あなたが大好きで、大嫌いだった。
それは今も変わらなくて、たぶんこれからも変わらない。
背中越しに感じる親友の温もりを、私は一生忘れない。
5/29/2023, 1:28:59 PM