「七夕」
「織姫と彦星みたいだったよね」
「そう思っていたのは君だけだよ」
七夕の夜、降り続く雨の音を聞きながら、君の横顔を見つめる。本当にそう思ってたの。なんで黙ったまま東京に来てしまったのか、後悔ばかりだった。知り合う男の子はたくさんいたけど、違うんだよ。ドキドキもそれと裏腹の安心も、君とは違ったんだ。
「どうしたの?」
「何でもない」
「何でもなくないよね?」
そういうとこ。
付き合い始めてわかったことがある。些細なことでも気づいて言葉にしてくれる。
「何でわかるの?」
「何でかな。ただそう感じただけ」
織姫と彦星は相思相愛。あの頃は片思いだった。二人ともそうだったなんて笑っちゃうよね。だから、決めた。もう言いたいことは全部言う。それで傷つけちゃったら、ちゃんと責任持つよ。
言えなくてつらいのと、言ってつらいのだったら、言う方を選ぶ。手を伸ばして君の手をつかんだ。「ん?」て顔をしながら握り返す君が好きだよ。
7/8/2024, 1:31:24 AM