※直接的な表現がアリ〼
「てか欲望って付加価値ですよね」
何の話からそうなったのかは知らないが、いつの間にか欲望の話になったらしい。
この店にいる過半数が新作を飲む中、私はいつも通り、砂糖に珈琲を淹れるような比率の何かを啜っていた。この世間一般から見ても妙な後輩が、唯一私にドン引きするモメントだ。
「ウーン?」
「例えば今日の新作とか、昨日まで死んでも飲みたいと思ってたんですけど、今飲めて死ねるほど満足したかって言われると微妙で、そういう欲望と現実のギャップって謎じゃないですか」
「アーネ」
分かるっちゃ分かる。けど、それは期待と現実のギャップという並一通りのところに落ち着くのでは? とも思う。
「だって極論恋人って価値ないじゃないですか。セフレもなんですけど、性欲とかそういう物ありきで成り立ってるものと同じで世の中って欲がなかったら立ち行かないんですよ」
「ソレ、欲望使って商売してる私達が話すことじゃなくない?」
「いやだなセンパイ、使ってるからこそですよ! 私女じゃなかったら絶望して死んでましたね! 顔も良くないし頭も良くない。話も面白くない! いまは性欲に生かされてるみたいなもんですよ」
私は自分に身体以外の魅力がないとは思えない。
友達も居るし、告白だってされたことがある。でも、そういう好意が全部欲望ありきで、結局奴が言うように欲望に生かされてるとしたら絶望する。
「これで美味しいものでも食べて」
渡された余分なお金を懐にいれる時でさえ考える。
自己顕示欲と嬢の蔑視だけで成り立っているような人間に、欲望をニーズに商売をしてる自分のこと。
やりたいことしかできない自分のこと。
……サイアク。
【欲望】2024/03/01
3/1/2024, 12:10:14 PM