特別な存在
山吹色の叢を掻き分けて飛び出した虎を一眼見た時、それが親友であることに気がついた。風貌が似ているわけでもなく、自らの正体を示すような仕草を見たわけでもない。そもそも夜の森は暗く、相手が何なのかもわからない。ただどこか見覚えのあるその独特な出立ちを通して、殆ど勘のような単調な思考回路が、彼が李徴子であることを絶えず私に知らせていたのだ。
久々の親友との再会に急いで駆け寄ろうとするが、やめた。李徴子がそれを望んでいないことは分かっている。しかし、踏みとどまり、向こうの暗がりに目を遣ると、大きな影がただひたすらに震えていた。
親友は自らが生み出した珠玉の詩を一つ読んだ。凡庸とまでは言わないものの、傑作というには今一つ足りない詩だった。特段具体的な改善点は見られないものの、それが親友が遺す最後の詩であったとしても、私の心を強く打つことはなかった。
やがて親友は草むらの中に消え、今や猛獣の咆哮だけが聞こえるのみである。
月夜に爆ぜた野分の上で、私は部下の元へ引き返す他なかった。
3/24/2026, 3:29:43 AM