ドドド

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     上手くいかなくたっていい。

幼馴染ってやつは、人によっては、
羨ましく感じるらしい、

少子化社会の弊害と言えばいいのか、
たまたま近所に子供がいて、
たまたま歳が近いなんて事は結構珍しいとか。


まぁ俺もマンガやアニメみたいに
そいつが滅茶苦茶可愛くて、
何故か家族ぐるみで仲が良くて
かつ自分に滅茶苦茶惚れている、
最初からそんな幼馴染だったら
何も無くても自慢してたかもしれない。


だがそんなのは、それこそ奇跡だろう、
ただのお隣さんだし、幼稚園からずっと
同じ組になったことも無い、
顔を合わせてもせいぜい会釈するぐらいの仲だ。


そもそもだ、隣とはいえ暮しに雲泥の差がある。

俺の家はじいちゃんから
譲り受けた古い日本家屋、
だが、アイツの家は、
海外からそのまま持ってきたような
立派な洋館だ。


土地の広さこそ差がないとはいえ
向こうが貴族なら、こちらは農民ぐらいの
差があると思っている。


そんな決して交わりそうもない関係に、
転機が訪れたのはある夏の日の夜だった。


お盆になると毎年、
両親の実家の方へ帰省するのだが、
今年は部活が忙しく、俺は一人留守番だった。

3日ほどの飯代で割と貰っていた俺は、
如何に食費を切詰めてお小遣いにするか
考えていた。


風呂も入り、後は切りの良いところまで
勉強でもしたら寝るか、という段階で
ブー、とやたら品の無いブザーが鳴る。

誰だ、こんな夜に
と思いつつ玄関に出ると
幼馴染が居心地悪そうに立っていた。

なんだなんだと話を促せば、
家に虫が出たらしい。


いや、そんな理由で家に来る意味が
わからなかった、
が、詳しく聞いた所
どうも俺と同じでしばらく両親がいないらしい。


それにしても、虫如きで夜中に
人様の家にくるかね?


まぁ、冷たく突き放すのも変だし
ちょっと退治するぐらいなら、と
了承して幼馴染の家にお邪魔した。


‥‥‥のが1時間前の話。

そもそも、こんな吹き抜けのリビングが
あるような家で小さい虫が出ましたって
見つかるわけが無いのだ。

なのに帰ろうとすれば、幼馴染は、
必死になって、こんな魔境に置いていくのか、
この人でなし!
‥‥‥だのなんの言って帰そうとしない。


取り敢えず家に来るか?と
言いかけたが、いきなりそれも変だし、
そもそも絶対に家のが、
幼馴染が言うところの魔境だしで
手詰まり状態になっていた。


一先ず、
お茶貰えるかな?と言うと
幼馴染は、ハッ、と気付き
謝りながら準備を始めた。


取り敢えず、こいつが、
幼馴染が落ち着くまで適当に会話でもするか
と、溜息とともに、明日の部活は、
しんどいだろうなー、なんてことを
思った。


それから3時間ぐらい
久々の幼馴染との会話は何故か弾んだ、

茶菓子が美味しいとか
部活が大変とか言えば、

習い事が多いとか
和菓子が食べたいとか、

そんなしょうもない会話を
時間も忘れて交わした。


やがて寝落ちした、幼馴染に、
自分の家から毛布を持ってきてかけ
戸締まりについて書き置きを残し、
玄関の鍵を閉めた後、
玄関ポストに鍵を入れて帰った。


翌朝、遅刻しかけた俺は
鬼のようなシゴキを受け
監督を恨みながら汗を流した。

そして帰ると玄関に幼馴染が立っていた、
お疲れ様、昨日はありがとうと
律儀にもお礼を言うために待っていたらしい。

それから、ちょくちょく、交流を持ち
付き合い出すまでにそこまでかからなかった。


当初の懸念通り、生活のスタイルも
趣味も趣向も全然違ったが、
上手くいかなくたっていい

俺はこの幼馴染を
嫁として自慢したいのだ。











8/9/2024, 12:49:08 PM