なにもしない休日、人はそれを堕落と言う。
未来と朔馬はその言葉に倣うように、未来の部屋でぼんやりとした時間を過ごしていた。
暇さえあればどちらかの部屋に集まるのは、二人の日常だ。
駄弁や戯れなどの時間消耗のためのみに存在するすべてを入り混じらせて、熱中するとお隣から鈍いキックの音が聞こえてくる。
しかし今日はそれとはうってかわり、それほど会話が流れない。
静寂の中を通り抜ける微かな耳鳴りだけが、水道から垂れ続ける雫のようにこの部屋で響いている。
最初に栓を締めたのは未来だった。
「昔の人はさ、夕日が沈んでいくとき、海に飲み込まれたと思ってたのかな。」
「なにそれ、ポエマーですか。」
朔馬は失笑した。
想像と創造において豊かな男だとは思っていたが、不意にそのようなことを口走るほどとは知らなかった。
「まったく、才能豊かなものだ。」
声のトーンからして、これが皮肉であることを相手に隠す気がない。
ふらりと立ち上がり、にやにやした顔を未来の方へ向けながら、二人がくつろいでいたリビングの目先にあるキッチンへと足を運ぶ。
我が物顔で冷蔵庫を開けると、エナジードリンクを取り出して栓を開けた。
「あ、俺にも頂戴。」
「はいはい。」
同じものを未来にも渡す。
「で?昔の人は……なんだって?」
「今ってさ、科学的に証明できることが増えたでしょ。まあ分からないことも多いけど、昔ほど未知が近くにある状況じゃない。」
「え?未知が身近?」
「くっだんな。」
「じゃなくて、」
「もし俺がその時代にいたら、海とかいうどこにでもあるくせに不可思議で満ちてる存在に対して、およそ馬鹿みたいな好奇心を発揮してしまう気がする。その底が知りたくて、ふらっと沈んでそのまま海に殺されそう。」
「へえ。良かったな、生きながらえて。」
4/7/2024, 9:11:09 AM