こっこ

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太陽

結婚して、中々子供が授からなかった私達夫婦に念願の赤ちゃんが誕生した。
太陽のように明るい女の子に育って欲しいと、名前を陽菜子と名付けた。
陽菜子は活発な女の子で、男の子に混じって外遊びが大好き、スポーツ大好きで健康でのびのびと育ってくれた。
お転婆だったから、ボール投げした先のお宅のガラス戸を割って、菓子折りを持って謝りにいったこともある。
相撲で相手の大輝くんを投げ飛ばして、打ちどころが悪く捻挫になり、これまた親子で謝りに出向いた。
とにかく体を動かすことが大好きで、小学校ではミニバスケ、高校ではサッカー、大学ではハンドボール…どうも球技が得意らしい。
そんな娘の活躍を、夫はいつもそっと見守ってくれていた。ひとりっ子だからと、甘やかすことはなく礼儀に厳しかった。アメフト部でキャプテンを務めた体育会系の血筋は陽菜子に遺伝したのかもしれない。
そんな似たもの親子の夫が、倒れたのは陽菜子が大学1年の冬。くも膜下出血だった。夫の死はあまりにもあっけなかった。
泣いている暇も無いほど、葬儀の準備に追われた。
初七日も済ませ、抜け殻のように沈んだ様子のわたしを見て、「お母さん、大丈夫だよ。窓の外を見て、太陽があんなに輝いてる。空もこんなに広い。お父さんがいなくなってどうしようもないほど寂しいけれど…私がいるじゃない!一緒に生きていこうよ…お父さんの分まで。泣きたい時は思いっきり泣いていいんだよ。お母さん。」
そう言って笑顔を見せた陽菜子は、太陽のように眩しく頼もしかった。
冬から春に近づく気配がした。太陽が高く高く昇っていた。

8/6/2024, 8:02:41 PM