ひとひらの寒気が地を薄く撫でるような冬の入り口に、
君は雲よりも静かに背を伸ばし、
薄紫の冠を掲げて立っている。
風が来ても揺らがぬ芯、
凛と響く茎の青さ。
見下ろすのではなく、
ただ季節の行方を見守るように高みに咲き、
大気の澄明をそのまま纏い込んでいる。
手の届かぬ高さでありながら、
なぜか胸の奥に触れてくる花だ。
茎は空へ向かって伸びゆくのに、
その顔だけはこちらへ向けるように咲いている。
それは単なる首の角度ではなく、
高さという孤独の中で、
人の気配を探し当てた花の仕草のようだ。
大気の上層に近いところで、
冷たく澄んだ風を纏いながら、
それでもなお地上にいる僕らへ
「ここにいるよ」と囁くように花弁を傾けてくる。
見上げれば手は届かないのに、
視線だけは真っ直ぐ交わってしまう不思議さ。
散る時も崩れることはなく、
衣を落とすように地へ降りてくる。
透きとおる薄紫色は一枚ずつが驚くほど大きく、
触れればふわりと水へ変わってしまいそうなのに、
そこには儚さよりも、むしろ舞台を降りる役者の
最後の所作のような優雅さがある。
地に落ちた花弁たちは冬の光を反射し、
まるで一晩だけ残された羽衣のように横たわる。
散ったあとでさえ、あの花は高貴さを失わない。
むしろ落ちて初めて、その大きさと静かな存在感が
いっそう際立つほどだ。
キダチダリアは、ただそこに立っていた。
その立ち姿が、季節そのものと接続し、
歩かぬ冬の足音を今年も感じさせてくれた。
題 冬の足音
12/3/2025, 12:07:28 PM