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『一輪の花』

よく、病院に行く度に思うことがある。
私の言うことが、医師や看護師に正確に届いていない、と。

痛みや苦しみをなんとか伝えたいのだけれど、向こうは「よくあること」として処理するか、彼らの経験則に依って「それはこうだから」と私に言い聞かせる。

それはそうなのだろうけど。
どうしようもない不安や苦しさを、解ってほしいと思ってしまうのだ。
でもそれを彼らに期待するのは、少し違うのかもしれない。カウンセラーとか、そういう職業の人は別にいるのだから。

帰りのバスが来るまで、病院の中庭でベンチに腰掛ける。
入院患者の無聊を慰めるためか、やさしい色合いの可憐な花々が咲いていた。
それを少し眺めた後、立ち上がって院外へと歩く。

バス停のある石畳の間から、ひょろりと頼りなさげな白い花が一輪咲いていた。
中庭の花々とは比べものにならない、ちっぽけで目立たない地味な花。
誰にも気づかれずに踏まれてしまうかもしれない花。
バスが来るまでのあいだ、目が離せずにじっと見つめ続けていた。

2/25/2025, 9:50:41 AM