白米おこめ

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通勤時に見た、ふたり並んで登校する高校生に
学生時代の自分と彼女の姿を空目した。

君と並んで歩いた時間。
しがらみから解放されて、ただの人となって、
好きな事だけを話せる時間。
駅から学校まで、行きで15分。
帰りは、ちょっとゆっくり歩いて20分。
幸せな時間を挙げるとしたら、
多分こういう時間なんだろうな、と今になって思う。

たまに走って、息を切らしながら乗り込んだり。
目の前で電車を逃して、
駅のベンチでまた次の電車を待つまで喋ったり。
…話し足りないから、早足でも間に合うような電車を
わざと見送ったりして。
いつだって私達は、遮断機が降りる音を聴きながら
電車の音にかき消されないように話していた。

反対方向の電車に乗る君が、電車が来てから、
向こうのホームに行くまでのその数分。

その時間が、数分なのに、惜しい。
今の私にはもう、二度とない時間。
だから、今朝見た学生達のように、
私達がまたあの時に戻れたのならば。

私はきっと、彼女の袖を引っ張って、
最後の電車を乗り過ごすんだ。
もう二度とない時間を、もう少しだけ、温めるために。


「さよならは言わないで」 白米おこめ(遅刻)

12/4/2024, 2:32:30 PM